こんにちは。
教材研究 道徳編です。
今日は4年生で扱う、『雨のバスていりゅう所で』です。
テーマ(内容項目)は「規則の尊重」です。
早速ですが、「規則の尊重」の授業のポイントは「なぜきまりを守るのか」です。
みなさんは、「なぜきまりを守るのか」という問いに何と答えますか?
子ども達なら、おそらくこんな答えが返ってきそうです。
・きまりだから
・大人(先生)が言ったから
・破ると叱られるから
しかし、このような考え方は低学年で卒業しておきたいですね。
「きまりだから守る」のか、「きまりではなかったら守らなくていい」のか、そして「何のために守るのか」・・・
これらを中心的な問いとして子ども達と一緒に考えてきたいものです。
では、さっそく見ていきましょう!
- 内容項目と教材について
- 導入
- 発問・中心的な問い
- 終末・まとめ
1 内容項目と教材について
内容項目
C 主として集団や社会との関わりに関すること
「規則の尊重」(3・4年生)
「規則」→ 約束やきまり
規則の尊重とは、つまり社会(世の中や、子ども達にとっては生活の身の回り)においての約束やきまりごとを考える内容項目です。
しかし、約束やきまりごとには大きく2つのカテゴライズがあります。
1つ目は「ルール」です。
法律や契約、校則など文字に起こされたもの、明文化されたものです。わりとお堅いイメージのものですね。
物事を行う上で守るように定められた約束事
一方、2つ目は「マナー」と呼ばれるもの。
こちらは明文化されず、その時々の場面や状況、関係性などによって異なるものです。
人と人との関わりで当然その場面でしかるべきとされる行儀・作法のこと
「人と人との関わり」の中で、「しかるべきとされる」行為を指します。
つまり、そこに関わる人々が「こうあるべき」と認識した行為がマナーに当たります。
言いかえれば、「◯◯するべき」であって、「◯◯しなければならない」のではない、ということですね。
例えば外で食事をする際、仕事上などの時には、あまりにぺちゃくちゃとおしゃべりをしてはマナー違反になります。
しかし、家族のとの食事ではマナー違反にも当たらないことが多いでしょう。場面や関係性でマナーは変わるのです。
そして、仮にその店がおしゃべり禁止の店の場合、これは「ルール」が適用されることになり、「しゃべらない方がいい」ではなく、「しゃべってはいけない」になるのです。
「雨のバス停留所」がこの「ルール」と「マナー」のどちらについて考えればいいのか、見えてきましたね。
この授業では、「マナー」について議論し、「マナーを守ることでどんないいことがあるのか」や「マナーを守る心の内側の部分」について学習し、「なんのためにマナー(きまり)を守るのか」を子ども達に考えさせることができれば、授業は成功したと言えるでしょう。
教材について〜留意点〜
この教材は、マナーについて考える教材と言えるでしょう。
しかし、マナーを考える上で、「正しい行動」にだけ焦点を当ててしまうと、内容・学びの薄い道徳の授業となってしまいます。
「正しい行動」だけなら、「ちゃんと列に並べばよかった」と結論付けて終わってしまうからです。
そんなことは子ども達は百も承知です。知識として知っています。
そんな「当たり前」とされていることをわざわざ1時間の授業で「確認」しても意味はありません。
それこそ、先生が求めている「正しい」とされる行為・行動をただ表面上取り繕う子ども達が育つだけです。
「行動」を問うのではなく、「行動した理由」を考えていくのです。
それこそが道徳性を養う意味のある授業となります。
- きまりだから守るのか。
- きまりでなかったら守らなくていいのか。
- なんのためにきまりを守るのか。
こういったことを中心的な問いにし、子ども達と共に考えていきたいものです。
教材について〜あらすじ〜
よし子はお母さんといっしょにおばあさんの家に出かけます。
しかし、朝から雨が降っていました。
バスの停留所では、そばのタバコ屋さんの軒下でバスを待つ人達が雨宿りをしています。
よし子たちものき下に入りました。
遠くにバスが見えました。よし子は、雨の中へかけだすと、停留所の一番前に立ちました。
待っていた人たちは、列を作って順番に停留所に向かって歩き始めました。
よし子が一番にバスに乗ろうとしたとき、お母さんに強い力で肩をつかまれ、後ろに引き戻されました。
お母さんは何も言わないで、後ろに連れていきました。いつもとちがって、お母さんはとてもこわそうな顔でした。
バスに乗りました。もう座席は空いていませんでした。
「ほら、ごらんなさい。」と言うつもりでお母さんを見上げました。すると、お母さんは何も言わずにじっと窓の外を見つめています。
いつもなら優しく話してくれるのですが、いつもと全然ちがうのです。
よし子は、自分がしたことを考え始めました。
4年生「雨のバスていりゅう所で」(日本文教出版)
2 導入
まずは本時のテーマ「きまり」についてしっかりと想起させます。
「きまり」がある背景を自分たちなりに捉えておくことで、授業展開時に考えが揺さぶられる契機になります。
T:教師 C:子ども
T:きまりを守る(守らせる)ために効果のあることは?
C:罰を与える(きめる)
C:ごほうびをあげる
※場合によっては半数近く(あるいは以上)の子達が「罰」ということに賛同するかもしれません。
法と罰はセットであることが歴史上繰り返されてきましたから。信賞必罰、ですね。
そこで、続けて問いましょう。
T:よし子がしたことは良いことか?悪いことか?
C:悪いこと
C:自分のことしか考えてないから
C:後から来たのに順番を守っていないから
※多くの子は「悪いこと」だとこたえるはずです。しかし、「悪いことをすること=悪い子」かと問われると、迷いが生まれます。
T:では、よし子は悪い子?
C:悪い子、とまでは言い切れない。
T:なぜ言い切れない?(なぜ悪い子ではない?)
C:いつも悪いことをするとは限らない。
T:では今回このような行動をしたのはなぜだろう?
C:座りたかったから
C:ラクしたかったから
C:お母さんのために席を確保したかったから?
C:そもそも雨宿りは列に並んでいると思っていなかったから
3 発問・中心的な問い
バスを待っていた人たちは、よし子の行動に怒っていただろうか?
導入からよし子の視点でずっと思いをめぐらせた後、視点を周囲に置き変えることで考えに多面性が生まれます。
「怒っていた」と考える子もいますが、「怒っていないのでは?」と考える子もきっといるはず。
その差が議論を生みます。
『なぜ』怒っているのか、はたまた『なぜ』怒っていないのか。
そして、さらにもう一つ発問しましょう。
お母さんがよし子さんの肩を強い力で引っぱったのはどうして?
お母さんの行動を通して、バスを待っている人たちとよし子さんの違いに気づくことができたなら、それがきまり(マナー)だと納得いくはずです。
きまり(マナー)とは、みんなが気持ち良く過ごすためにあるものだと気づければ、この授業は成功と言えそうですね。
また、別案として、よし子さんが順番を守らなかった場面をロールプレイしてみてもいいでしょう。
ふだんやんちゃな子にバスを待つ人たちの役をやってもらうと、とても素直な気持ちを発表してくれるでしょう。
この授業は実際、とても盛り上がって状況の理解が深まったことをよく覚えています。
他にも違う角度での発問も考えられるでしょう。
・この話で出てきたきまりは何?
・よし子とバスを待っていた人たち、考えていたきまりは違う?
・よし子さんはみんながバスを待っていたことはわかっていただろうか。
・雨の時は軒下に並ぶ、ということは書いていないから、きまりはないのでは?
・きまりを守らないと罰金がある世界、そこに住みたい人?
・きまりとは何を守るものでしょうか。
4 終末・まとめ
道徳の授業の終末で価値観を1つに「まとめ」ることは決してふさわしくありません。多様な価値観を認め合うことが大切です。
ここでは便宜上、この授業で学び取って欲しいポイントとして「まとめ」として表記しています。
終末に、もう1度「きまりを守る(守らせる)ために効果のあることは?」とたずねてみましょう。
そうすることで子ども達の学びや変容、自己評価が見えてきます。
- きまり(マナー)はみんなが気持ち良く過ごすためにある。
- きまりは守るためにあるのではない。
- きまりは周りの人の心を守るために存在するもの
これらのポイントを押さえられるといいですね!
今日は「4年『雨のバス停留所で』【規則の尊重】の授業はどうしたらいい?」
について考えてみました。
一歩前に進みましょう。また次回もお楽しみに。
コメント